2012年5月4日金曜日

フレデリック・フォーサイス作『マンハッタンの怪人』を読む 〜自宅で楽しむミュージカル〜


フレデリック・フォーサイス作、『マンハッタンの怪人(角川文庫)』を読んで

パリのオペラ座を逃れ、ニューヨークのマンハッタンへ…。
〜「オペラ座の怪人」の"その後"の物語〜

ミュージカル『オペラ座の怪人』の続きを描いた作品で、『マンハッタンの怪人(1999年出版)』なる小説がある事を初めて知った時には、(作者には非常に申し訳ないのだけれど)殆んど関心を持つ事ができませんでした。

正直なところ「関心が持てない」と言うよりも、「何てまた突拍子もない事を言い出すのだろう・・・」というネガティブな印象で、残念ながら私にとっては「論外」という感覚でした。


なぜダブルバイオリンはとても稀である

何分、あの素晴らしいミュージカルの幕が静かに下りた「」の物語を、(良くも悪くも)自分以外の第三者によって決定付けられてしまう事自体にまずは根強い抵抗がありましたし、それよりも何よりもパリのオペラ座を去ったファントムの逃亡先があの「ニューヨーク・マンハッタン」だなんて、いくら「自由の女神」が彼の母国である「フランス」から贈られたものだとしても、余りにも現実離れし過ぎているのではないかと思ったものですから…(苦笑)。

と、そこまでの強い拒否反応を示していた小説を私がここに来て読む気にな ったのは、ミュージカル『オペラ座の怪人』を手がけたアンドリュー・ロイド=ウェバー氏自身による続編ミュージカルが、何と今年(2009年)の秋公開を目指して目下制作中であるという驚きのニュースです(※詳細)。

「前作」が押すに押されぬ世界的な大ヒット・ミュージカルだけに、下手をすれば過去の栄光を全て台無しにしてしまうかもしれないウェバー氏のこの度の挑戦は、「音楽・脚本」共に絶対的な「自信」があっての事かもしれませんが、今日現在その内容は未だ厚いベールに覆われています。


子どもたちは待機します

さて、前置きが少々長くなってしまいましたが、こうして延べ2日間で読破する事となったフレデリック・フォーサイス著の『マンハッタンの怪人』は、当初の根強い"思い込み"に反してなかなか面白い内容の小説でした。

エリク(ファントム)を取り巻く人間ドラマでは、『オペラ座の怪人』以上に濃密な関係が描き出されていましたし、随所に用意されている読者の意表を突くような展開の中には、前作に引き続いて「猿のオルゴール」に重要な役回りを担わせるといった粋な演出も含まれていて、多彩な登場人物たちの「語り」による進行は全編� ��通して読者を飽きさせる事がありません。

そして私が最も驚かされたのが、読み進めれば読み進めるほどいつの間にか、物語の舞台が「ニューヨーク」である事に違和感を覚えなくなっている事でした


"状態の劇場は" ""教会を下回る

ちなみにフォーサイスという現代作家は、「情報小説の達人」と呼ばれる事もあるそうですが、例えば「エリク(ファントム)」や「クリスティーヌ」といった架空の登場人物以外にも、この物語の設定当時に実在したアメリカの作曲家「アーヴィング・バーリン」や、人気俳優「ダグラス・フェアバンクス」などを次々に登場させるなどして、フィクションにも関わらず時事的な要素にもこだわっている様子がこんな所からも伝わってきます。

また作者自身の「あとがき」によると、物語の舞台となる1900年当初のニューヨークについての徹底的 な調査をまずは繰り返し、更にはウェバー氏との討議を重ねてこの物語を完成させていったそうですが、作者自身もこの偉大過ぎるミュージカルの続編を書くに当たっては、当初から相当な責任覚悟を持って臨まれていたのかもしれませんね。


と、そんな作者の記者上がりの几帳面な性格は、各章の「タイトル」を全て目で追っただけでも、「いつ(when)・どこで(where)・誰が(who)・何を(what)・どのように(how)」という、「4W1H」の形態が徹底して貫かれている所にも現れていますが、皆さんはこの"絶対的な自信"をもって書かれたと思われる続編小説のクライマックスを、どのようにお感じになられたでしょうか…?

私自身は、クリスティーヌがエリクの目前で命を奪われてしまうという状況は、(登場人物の誰の立場に身を置いても)あまりにも残酷過ぎる気がしてしまい、何とも言いようの無い哀しさと脱力感に襲われてしまいました� ��。たとえ2人の間にピエールという「忘れ形見」がいて、エリクが生涯をかけて彼の事を守り抜いたとしても…。

この秋にも公開されるというウェバー氏による続編が、当作品を脚本中にどれくらい盛り込まれているのかは分かりませんが、ミュージカル『オペラ座の怪人』の熱烈な1ファンとしては、あの素晴らしいミュージカルの幕が静かに下りた「後」の物語は鑑賞者の数だけあって、その1人1人の胸の中にのみ存在するものなのかもしれない…と思ったりもしたのでした。(記事作成日:09年6月23日)


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